「家賃の値下げ交渉なんて、できるのだろうか・・・」。こんな風に考えていませんか?確かに、不動産バブル全盛期には、上がる一方でした。
でも、バブル崩壊後、賃貸物件の事情は大きく変化しています。意外に知られていませんが、借地借家法上は、家賃の値下げ交渉は可能です。
しかも契約時だけではなく、入居中いつでも可能なのです。ただ、家賃交渉と言う以上、上手くいくケースもあれば失敗する恐れもあります。
そこには、物件によって交渉術が異なるので、失敗しないためのコツがあります。覚えておきたいポイントをご紹介します。
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こんな物件が家賃の値下げをしやすい
賃貸物件を借りる時、現実には値下げ交渉さえしないケースが普通ですが、実は思っているより簡単に値下げ交渉はできます。
値下げ交渉と言うと、家賃だけを想定しているようですが、家賃の値下げがNGでも、他の交渉ならできるポイントもたくさんあるのです。
交渉次第で賃貸物件の値下げ交渉はできる
実際問題として、賃貸物件の契約時に、家賃や初期費用の値引きを交渉してくる顧客は、家賃で約15%、初期費用は約10~30%というデータがあります。
不動産業界の事情をよく知る賃貸の仲介関係者の話によると、賃貸物件によって金額に差はあるものの、半数近くは家賃の値下げ交渉ができるそうです。
また、ほとんどのオーナーや家主は家賃交渉で「ビタ一文」まけないというケースは少ない、という驚くような内情を公にしています。
これは背景には、仲介業者の担当者とオーナーや家主の人間関係の密度が大きく作用しているようです。
家賃を決める要素とは何か?
家賃の値下げ交渉が可能と言っても、どんな物件でも必ずできる訳ではありません。家賃は通常、周辺のエリアにある同じような物件の家賃相場から算出されます。
物件を多彩な角度から客観的に判断し、借りたい物件の賃料が周辺相場より高いケースは値下げ交渉がしやすい物件です。
その他の家賃を決める要素としては、物件の築年数をはじめ、間取りや広さ、付帯設備や駅からのアクセスなどの利便性に加え、周辺の環境なども大きな条件となります。
また、エアコンがない、1階の部屋、風呂とトイレが一緒のユニットバス、陽当たりが悪い、などのようなマイナスの条件があれば、値下げ交渉の材料になり得ます。
貸主は家賃収入が目的なので、空室の期間が長い物件は狙い目です。高い家賃のままで何ヵ月も空けているより、多少下げてでも早めに入居させた方が得策だからです。
逆に、新築物件はそれだけで人気があるので、貸主側も強気で、値下げ交渉の可能性は余程の事情がない限り難しいようです。
ご近所と家賃が異なるケースは?
同じマンションやアパートに住んでいるのに、ご近所と家賃が違うことも結構あるようです。
部屋の広さや仕様などが異なるのなら分かりますが、ほぼ同じ間取りで同じ仕様なのにご近所より家賃が高いと何となくシックリこないものです。
ただ賃貸の場合は、部屋ごとに貸主と借主の契約なので、同じ建物内の同じような部屋でも、当事者間で合意すれば、家賃に差があっても問題ではありません。
駐車場などとセットで値切る場合
また、貸主が駐車場なども貸しているようなケースでは、一緒に契約することを条件に、値下げ交渉がうまくまとまることもあるようです。
エリアの相場感をある程度把握しておく
家賃の値下げ交渉の前に必要なことは、交渉のたたき台とするために、現在の家賃が適切かどうかを下調べしておくことです。
周辺の相場感もないまま、交渉のテーブルに付いても上手く進むはずがありません。まずは相場を調べることから始めましょう。
根拠のない値下げ交渉は通らない
家賃の値下げ交渉をするには、貸主と話し合うための明確な理由を手に入れることが必要です。
一般的に家賃を決める主な要素は、上記のような物件の築年数、間取りや広さ、駅からアクセス、周辺の環境なので、近接するエリアで同じような部屋の家賃相場を下調べしましょう。
最近では、インターネットの普及で、不動産の物件情報は簡単に調べられます。
交渉する前に、似たような部屋と比べて家賃設定は適切かどうかのほか、同じ建物内に空き部屋はあるか、あればどのくらいの期間空いていたか、近くの同等物件に空きがあるか、などの情報を得ておくことも有益です。
これは、かなりの効率で家賃の値下げ交渉という土俵に上がる可能性が生まれてきます。
また、値下げ交渉をする前に、契約で審査が通るかどうかも抜きには語れません。毎月の家賃をきちんと払えるだけの十分な収入があるか、なども見直しておきましょう。
例えば、一般的には就業期間が短い場合や不安定なアルバイトなどでは、審査にパスできないかもしれません。
具体的な交渉方法や切り出すタイミング
家賃の値下げ交渉は、入居後でも十分に可能です。ところが、実際には意外に入居後に家賃の交渉をする賃借人は少ないそうです。
そこで、入居後に家賃の値下げ交渉をする方法を紹介します。
物件に空室が出た時がチャンス
値下げ交渉をする手段はいくつかありますが、一番効果が高い方法は、現在借りているマンションやアパート内に空室が出た時です。
このような時には、必ず不動産会社のウェブサイトをチェックしましょう。
空室が出ると、すでに入居者の募集が始まっているはずなので、該当する部屋の家賃をチェックします。募集を始めたころは、おそらく自分が借りている部屋の家賃とほぼ同額のはずです。
ところが、借り手が見つからず、空室のまま2~3カ月が経過すると、貸主や不動産の管理会社などが早急に入居者を見つけるため、家賃を下げているケースがあります。
家賃の値下げ幅が1,000円や2,000円なら仕方ないですが、もし5,000円ほど下がった場合は年間で6万円の差が生れるので馬鹿にはできません。
このタイミングで値下げ交渉をすれば、かなりの確率で成功することが多くなります。
オーナーや家主に話を通すことが重要
不動産会社に家賃の値下げ交渉を問い合わせる時期も重要です。まだ、入居者を募集している場合は、問い合わせをするのはNGです。
というのは、この時期だと家賃を元に戻される可能性があるからです。
値下げ交渉をするタイミングの鉄則は、必ず入居者が決まった後です。これなら、元の家賃に戻すことはできないので、交渉の場に乗せる材料になります。
確かに、不動産会社が簡単に交渉のテーブルに付くことはありませんが、粘り強く依頼することです。
不動産会社は渋っても、オーナーや家主側に話を通すと、意外とあっさりと値下げに成功することも多いようです。
値下げ交渉のタイミングは3つ
以上より、家賃の値下げ交渉をするタイミングは、大きく分けると①物件の申込時と②入居申込みの審査にパスした時、または③入居中です。
入居中だと、隣人の騒音や物件の管理状態が悪いなども交渉には有利に働きます。
物件の申込時は、家賃の交渉をする意思があることを伝える絶好のチャンスです。内見や下見した後、不動産会社で入居申込みをするのが順当な流れです。
まずは、この時に軽く値下げ交渉を持ち掛けてみます。まだ、この時点では本格的な交渉でなくてもOKです。
なぜなら、入居審査があるので、不動産会社もまだオーナーや家主に家賃の交渉をすることはないからです。
最も効果的な家賃の値下げ交渉のタイミングは、入居審査がパスした直後です。ここが値下げ交渉の最大のチャンスです!
入居審査にパスすれば、契約上の障害はなくなったので、不動産会社も確実に1件成約したいはずなのです。
交渉の方法は、簡潔に言えば、「少しでも値下げしてくれたら間違いなく契約する」という意思を伝えることです。
不動産会社側としても、確実な顧客となりそうなケースを簡単には手放さないので、最後にオーナーや家主と掛け合ってくれるケースが高くなります。これが、最も成功確率が高い交渉術です。
ただし、必ず守るべきなのは、電話で値下げ交渉はしないことです。入居の審査にパスしたという連絡があれば、直接、不動産会社へ出向きます。
そして、担当者と直接面談で交渉します。これは架空の話ではなく、担当者が実際に家主に掛け合ってくれるかどうかを確認するためです。
あやふやな回答の営業マン次第では、オーナーや家主と交渉したことを確認する意味でも大切です。
また、入居時に交渉しやすいのは礼金や仲介手数料、また最初の1ヵ月分の家賃をタダにしてもらうフリーレントです。
家賃10万円の部屋に2年住む場合なら、礼金1カ月分を安くしてもらうことは、毎月約4,200円家賃を下げるのと同じです。
長期間住む場合なら、家賃を値下げしてもらうことはお得ですが、短期の場合なら他で安くしてもらう方がより無難なケースもあります。
ただし、敷金を安くしてもらう場合は要注意です。敷金は礼金や仲介手数料とは性質が異なるお金です。
敷金は入居中に何かあった場合に備えて最初に預けておく、いわゆる保険のようなもので、退去するときには返却されます。
ということで、敷金2ヵ月を1ヵ月にしてもらっても、退去するときに返却される金額が変わるだけで、入居者が得するわけではありません。
隣人の騒音や物件の管理状態が悪いなど
そのほか、家賃の値下げ交渉を成功させるには、マイナスポイントを的確に指摘することも不可欠です。例えば、1階などの低層階にしか空室がない物件は狙い目です。
どうしても賃貸物件は高層階に人気があります。上がるに比例して、家賃もアップするのは、いわば常識です。
というのも、1階部分などの低層階は防犯上の問題や車の騒音なども危惧されるので、そこを突いて値下げ交渉を行えば成功の可能性は高くなります。
また、隣人の騒音がうるさいとか、物件の管理状態が悪いなどでも交渉の可能性は残っています。
入居者は更新時がおすすめ
賃貸借契約は通常、2年契約ですので、2年に1度は契約の更新が必要です。特約があれば自動更新というケースもありますが、一般的には契約更新時に再度、手数料などを支払います。
手数料は物件によって異なりますが、家賃の1カ月分が普通です。
家賃の値下げ交渉のチャンス到来
契約の更新は手数料などの出費があるため、嫌がるケースもあるようですが、実は入居者にとっては家賃の値下げ交渉のチャンス到来なのです。
不動産会社にとっても家賃の改定に加え、更新手数料は貴重な収入源なので、契約更新の通知が届けば、早速連絡をして、家賃の値下げ交渉をします。
入居当時より2年も古くなっている訳なので、少々の値下げは主張できる内容です。
ただ、更新の時期が1月から3月の繁忙期は、できれば交渉は避けた方が無難です。不動産会社や管理会社が非常に忙しい時期のため、真剣に値下げ交渉に応じてくれる環境にはないからです。
家賃が駄目なら設備の改善を申入れる
家賃の値下げ交渉が難航しそうな場合は、目先を変えて設備改善の交渉を申入れてみましょう。
例えば、トイレのウォッシュレットがない部屋には設置をお願いし、和室にある畳の交換などを交渉してみます。
不動産会社も今の時代には、ウォシュレットくらい備え付けないと良い借主を見つけにくいことなどは分かっているので、契約の更新時に申入れると、意外にすんなりと対応してくれることもあります。
ただし、賃貸借契約書に契約期間中の賃料変更はしない、などの特約があれば入居中の交渉は可能性が薄くなります。
ツボを押さえて上手に交渉
家賃の値下げ交渉には2パターンあることが明確になりました。
1つは新たに賃貸で部屋や住宅を借りる場合、もう1つは既に住んでいる部屋や住宅の家賃を値下げをしてもらうケースです。
家賃は毎月、定期的に支払うものなので、月1,000円安くなれば年間で1万2,000円、3,000円安くなれば3万6,000円もお得になります。
値下げ交渉というと、気に入った部屋の審査をしてもらえないのではと心配になったり、そもそも値下げ交渉ができることさえ知らない方がたくさんおられます。
ただし、そこにはコツやポイントがあるので、ツボを押さえて上手に交渉してみてください。
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